ART IN MY ROOM
アートフェアに行って派手な現代アートの最前線を見たり、美術館に行って歴史的な名画を鑑賞したり、アートの楽しみ方は沢山ある。
気に入った若手作家のアートを買い、部屋に飾ってみたり、その作家の活躍を知るにつれその後の生活に楽しみをもたらしてくれるのも現代アートをコレクションする醍醐味だと思う。
ピカソやゴッホのような名画は見るだけのもので買うという考えもさらさらないが、部屋に飾って共に過ごしたいと思う絵をあえてあげるならイタリアの画家ジョルジョ・モランディの絵が欲しい。
20世紀前半にイタリアのボローニャで活動したモランディは何気ない静物画を描くのだが、20世紀美術の歴史において非常に重要とされる画家だ。
数多の芸術運動が生まれては消えていった20世紀においてモランディは一貫して独特な静物画と風景画しか描かなかった。
生まれ故郷のボローニャをあまり出ることもなく、モランディはアトリエにこもり卓上静物画と風景というテーマを生涯にわたりひたすら描いた画家である。
決して派手な絵ではなく、カップや徳利のような瓶、ブロックのようなオブジェが渋い淡い色調で配置を変えて描かれているだけの絵なのだがなんとも言えない味わいがあるのだ。
スルメイカと言っては失礼だが噛めば噛むほど味が出るような、そんな絵なのである。
朝起きた時に眺め、夜にちびちび酒でも飲みながら見る、そんな楽しみがありそうな絵だ。
シンプルで派手さもなくインパクトもないがなぜか見飽きないような不思議な魅力の絵である。
見る時間やその時の気持ちで様々な思いをもたらしてくれるような底力のある絵に思える。
だからどれか1枚だけ部屋に飾って楽しみたい絵を上げるとなるとモランディの静物画が思い浮かぶのだ。
絵とは不思議なもので見る時の自分の気持ちや歳を重ねて変わってゆく自分を見つめさせてくれるような素敵なパワーを秘めているのだと思う。