HIDEAKI KAWASHIMA

六本木にある小山登美夫ギャラリー六本木にて、川島秀明展「Stream」が開催されました。

川島秀明にとって小山登美夫ギャラリーで7度目の個展となるこの展覧会では、心境の変化が大いに表れた、新たな展開の新作ペインティングが発表されました。

川島秀明は、活動初期から一貫して強い自意識と向き合い、さまざまな顔とそこに現れる憂いを帯びた繊細な目や表情を描いてきました。

それは20代に2年間比叡山で仏教修行をした経験なども経て、その時々の感情や試行錯誤をかさね、自分の心情を象徴的に投影した、自画像に近いものでした。

しかし近年のコロナ禍や、肉親、親しいアーティストの死をきっかけに、川島秀明は「自らの死」を意識するようになります。

同時期に、友人家族の幼い子供との出会いと交流ができたことは川島秀明にとって新鮮な大きな体験となりました。

ゆく人もあればくる人もある、人の存在とは生命の循環という大きな流れの一部であることに気づきます。

それにより「自己」への囚われから少しづつ解放され、見たもの聞いたものに素直に反応して表現するようになったのです。

今まで川島秀明の作品は、アクリル絵具による、薄く淡い色の巧緻なグラデーションが特徴的でした。

しかし死を意識した今、絵を始めた若かりし頃の屈託の象徴である油絵具への苦手意識を昇華させ、この展覧会の作品はすべて色鮮やかな油絵具で描かれています。

TOMIO KOYAMA GALLERY