2024年 2月 01日TRAVELING FOR ART
NANAE MITOBE
表参道にあるアニエスベー ギャラリー ブティックにて水戸部七絵の個展『座る人 “Sit-in”』が開催されました。
水戸部七絵はこれまで主に「顔」をモチーフに、油絵具を豪快に積層した塑像のような作品を制作し、その作品群を通して、人種や性別による差別や誤解からうまれる社会問題や、政治や資本主義がもたらす経済社会の弊害を映し出してきました。
この展覧会は、水戸部七絵が初めて本格的に取り組んだ原寸大の人物の立体作品と、レコードジャケットを支持体に描いた平面作品のインスタレーションで構成されました。
圧倒的な絵の具の物質感と重量感をもって存在する「座る人」の胸には、ヒップホップ界のスーパースターの名前が記され、コラージュされた複数枚のレコードジャケットの上には、韻を踏むトラッシュ・トーカーとしても有名だったボクシング界の英雄が描かれました。
この作品群は1960年にアメリカで行われた「座り込み」という非暴力的な抵抗運動と、コミュニティを超え、ジャンルを横断しながら進化を続けるヒップホップ・カルチャーのヒストリーを交差させ、平和的な方法で自由になることを示唆しました。