2024年 7月 31日TRAVELING FOR ART
RINTARO UNNO
神宮前にあるギャラリー、EUKARYOTEにて、海野林太郎による個展「奇跡」が開催されました。
海野林太郎はこれまで宗教的イコンやビデオゲームなど、⾃⾝のリアリティに根ざしたものを⼿掛かりとする映像・インスタレーションを制作してきました。
コロナ禍からはより差し迫ったテーマである「生/死」の可能性を両義的に映した個展「What You See is What You Get」のほか、銀座蔦屋書店をロケ地と同時に展示空間として、様々な文物の集合地を舞台にした異形の者同士の「触れ合い/触れ合わない」「共にする/しない」様をビデオ・インスタレーションで発表しました。
そこでは個人が信じるものや、見えている世界において記号や言葉では括ることのできない複雑な有り様を表現してきました。
今回の展覧会タイトルでもある「奇跡」は、通俗的に用いられる一方で宗教や信仰に結びつく言葉でもありますが、かつて聖書を研究し、信仰を持っていた海野林太郎にとって本質的な言葉であることは間違いないでしょう。
二年ぶりの個展となるこの個展では、海野林太郎が実際に飛行可能な飛行機の制作に挑む過程と、天使のイメージが軸となっています。
キリスト教における天界と地上を結ぶ存在として羽がはえた姿で描かれる天使、空を飛ぶ挑戦から始まり、商業・軍事利用を伴いながら発展してきた飛行機、海野林太郎はこの二つを人類の天空に対する切なる願望と欲望のかたちとして捉えたうえで、それらについての映像、絵画、オブジェなどの作品群をインスタレーション形式で発表しました。