SAORI DOI

虎ノ門にあるTHE LOOP GALLERYにて土井沙織の個展『門は開かれたり』が開催されました。

愛知県出身の土井沙織は神奈川と東京で育ち、2010年に東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻日本画領域を修了しました。

岩絵具や建築資材、顔料により、土のような質感で描かれた生物たちは、顔や足が横を向き、体が正面を向く特徴から古代エジプトの壁画などを彷彿とさせます。

また、レンガのような厚みのあるパネルも、作品により土俗的なイメージを持たせています。

土井沙織にとって、作品制作は人知を超える大きな存在を感じるための方法であり、祈り・まじないの類に近い儀式なのだといいます。

そのため、土井沙織の作品は共通してどこか崇高な空気を纏っており、鑑賞者を神秘の世界へ誘います。

モチーフとして登場する、人間と動物の中間とも取れる生物は、誰しもが子供の頃に持っていたようなピュアでありながらもどこか残酷な感情も持つ存在ででもあります。

また、モチーフ達は人間とその他の生物との共生の象徴とも捉えられます。

彼らの鋭く輝く目や不気味な笑みは、作品に人間らしい感情というある種の毒を持たせているようです。

 戦争や差別など、難しい問題ばかりの現代社会において、土井沙織の作品は、人間が時には愚かであり、時には愛すべき存在であることを改めて思い出させてくれるのです。

THE LOOP GALLERY