YOSHIHIKO UEDA

六本木にある小山登美夫ギャラリーにて、上田義彦展「Māter」が開催されました。

2017-2018年の「林檎の木」以来、上田義彦の小山登美夫ギャラリーにおける2度目のこの個展では最新作が発表されました。

40年もの間写真家として第一線で活躍をし続け、国内外で高い評価を受けている上田義彦ですが、その作品からは、一人の写真家としての一貫した視点、思想、人柄が色濃く伝わってきます。

上田義彦は、ポートレート、森、家族、河、建物、縄文時代の人骨、「紙」の肖像、林檎の木など、様々なモチーフを長い年月をかけて見出し、構想を紡ぎ、撮影に挑みます。

今回の展覧会で、作品名となっている「Māter」(マーター)はラテン語で「母・源」という意味です。

夜の月の光で滝、渓谷と、女性の身体を撮影し、それらを木の額縁に想定して2点で1 対の作品としています。

水、人体、母、地球、月の力など太古から続く命を生む力として、自然や女性の体は密接に繋がるものであります。

艶かしく写し出された水流と女性の体の肌のなめらかさには、自然の呼吸を感じるような不思議な共通するものがあります。

水、人、滝、人体、という別々と思われるものも地球においては生命として全て繋がっており、一つの大きな織り物のように編み込まれた存在です。

自然と人をすべてを対等に捉え、根源的な生命としての存在を作品に表す、上田義彦の深い眼差しがその真実を教えてくれるようです。

TOMIO KOYAMA GALLERY