KENJI IDE
駒込にあるKAYOKOYUKIで開催された、井出 賢嗣の個展「ふたりの人 ふたつの時間」からの作品紹介。井出賢嗣はこれまで、個人的な事象をテーマに立体物を中心とするインスタレーションで表現をしてきたが、一貫して「立体物」を表現媒体としてきた。
そこには何気なく飾っている置物や子供の頃から持ち続けているおもちゃのような「物」に対する信頼感や愛着が起因していると言える。
作品を「彫刻」ではなく敢えて「立体物」と呼ぶ井出賢嗣の態度には、「彫刻」と呼ぶには近すぎる、作品との親密な距離感が示唆されているようである。
井出賢嗣の作品制作の根本にあるのは、彼自身が生活の中で実際に見てきた風景や経験してきた物事であり、それはとても個人的なことで、それゆえに作品にはどこか懐かしさや切なさなどの感情を内包した親密さを感じる。
立体物として再現された井出賢嗣の個人的な記憶は、作品を介して観るものに侵入し、誰もが心の中にしまっている自分だけの秘密の風景を呼び起こさせるようだ。
様々な大きさや形の木を不思議な何かに作り上げてギャラリーの大きなテーブルに並べた展示風景は作品をぐるりとテーブルを回りながら色々な角度から観ることができて不思議な感覚を抱かせる。
Exhibitor / KAYOKOYUKI