NOBUYOSHI ARAKI
天王洲アイルにあるギャラリーANOMALYにて開催された、荒木経惟の展覧会アラーキー「愛の皮膜」からの作品紹介。
アラーキーの呼称で親しまれる荒木経惟は、日本の写真史における一つの巨大な現象といえる存在です。
1940年、東京・三ノ輪に生まれた彼は、千葉大学で写真印刷工学を学び、電通に入社。
広告写真の最前線で経験を積みながら、その対極にある私的な領域へと視線を深めていきました。
1964年、学生時代に撮りためた作品集『さっちん』で第一回太陽賞を受賞。
その後1971年、妻・陽子との新婚旅行を題材とした写真集『センチメンタルな旅』を自費出版します。
この作品を提示した彼は、自らの写真を「私小説」になぞらえ、「私写真(ししゃしん)」と宣言、90年、陽子は病に侵され没しますが、翌年、荒木は彼女の死をテーマに据えた『センチメンタルな旅・冬の旅』を刊行し、大きな反響を呼び起こしました。
家族という親密な対象にレンズを向ける行為は古くから存在しますが、彼が他の写真家たちと決定的に異なるのは、その「私事」を単なる思い出の記録としてではなく、今この瞬間に消えゆく時間を繋ぎ止めるための、切実な「時間の略奪」として機能させた点にあります。
いわば彼にとって写真は、社会的な記録や芸術的な昇華を目的とする以前に、自己と他者の関係性を剥き出しの感触のまま留める手段です。
EXHIBITOR / ANOMALY
