SATORU KURATA

六本木にある小山登美夫ギャラリーにて開催された倉田悟展の新作展「2P」からの作品紹介。

倉田悟の作品には、簡略化された仮面のような顔を持つ人や、擬人化された動物が登場する。

音を共合わないないような静謐な存在感と、ユーモラスでありながらも、それらは時に得体の知れない不穏さを帯びて描かれる。

作品に繰り返し登場するモチーフは、夕暮れ、海、夜、車、卵、寝るという行為など、作家の記憶に強烈に残っている「極めて個人的」な経験から着想を得ているという。
そうしたインスピレーションと、デジタル・ドローイングや物質的な制作プロセスとの反復の間で、倉田悟は「イメージの解像度を上げたり下げたり」することで、絵画でしかありえない表現を模索している。

空間を捉える独特のパースペクティブや光を表すビビッドな色彩、プリズムを描くような細かい光の処理や描線はどこかデジタル画像を想起させる。
しかし、それらは絵具の繊細な厚薄や絶妙な輪郭のぼかし、あるいは何も塗らない麻布のまま残された処理や筆触といった絵画の物質的要素に溢れている。

倉田悟は絵画という伝統的な技法にデジタル的な感性や私的な記憶の断片を再構築したようなイメージを加え、卓越した表現力と発想、テクニックで独特な絵画作品を仕上げるのだ。

絵画が持つ表現の可能性の地平を広げるようなダイナミックで息を飲むような試みが見るものを圧倒する作品となっている。

Exhibitor / Tomio Koyama Gallery

TOMIO KOYAMA GALLERY

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