
SATORU KURATA
京橋にある小山登美夫ギャラリーにて開催された倉田悟の新作展「あさをまつよる」からの作品紹介。
倉田悟は初個展の際に、自身の作品を「無価値性と美」で読み解くことができると述べています。
人生は無意味で無価値なのではないかという問い、それでもなお存在する美と、心の動きについて「私」を起点に作品を制作してきたと言います。
幼少期に、死とそれに似た眠るという行為をする夜を極度に恐れ、その苦痛を和らげるため生も死も等しく価値がないと思い込むようになります。
それに伴い無気力や無感動、無価値感に次第に苛まれるようになります。
20代の頃、父の車に乗り、まるで透明になったように運ばれ、荷物と自分が大差ないという感覚から生まれた作品「透明なドライブ」など、倉田が感じた人間存在の曖昧さや虚無感は独自の絵画表現へと発展していきました。
今回発表された新作では、そこに描かれるものが大きく変化しました。
以前のモチーフは夕暮れ、海、夜、車、卵、犬、寝るなど、その多くが記憶をもとに想像したものでした。しかし数年前から高齢者の多い郊外に移り住み、アトリエや自宅の中、その近辺で日々目にする人や植物、自然、動物、昼間の光景も具体的な絵の対象として描くようになったのです。
EXHIBITOR / TOMIO KOYAMA GALLERY