AKIKO UEDA

天王洲アイルにあるギヤラリー、KOTARO NUKAGAにて、上田暁子による個展「Fishing as a Mole Does – Until Stone Becomes Water –『もぐらのように釣りをする – 石が水になるまで –』」が開催されています。

1983年生まれの上田暁子は、絵画を単なる再現や表象の手段とは捉えず、事象が変質、変容していく過程や、その瞬間に立ち現れる出来事としての絵画を追求してきました。

2009年のシェル美術賞展で家村珠代審査員賞、2010年のVOCA展で大原美術館賞を受賞するなど早くから注目を集め、2018年にはPOLA美術振興財団の在外研修員としてベルギーに留学します。

この展覧会では上田暁子にとって大きな転機となったベルギー滞在中およびその前後に制作された作品が紹介されています。

そこには、幾重にも重ねられたイメージの層を通じて、時間や空間、記憶といった目に見えないものを多層的に浮かび上がらせる新たな展開が提示されています。 

展覧会タイトル「Fishing as a Mole Does – Until Stone Becomes Water –『もぐらのように釣りをする – 石が水になるまで –』」は、上田暁子の制作プロセスを象徴的に表しています。

視覚に頼らず土を掘り進むもぐらのように、あらかじめ「何をどう描くか」を決めずに描き始めるという姿勢。

そして、静かに待ちながらも見えないものを捉えようとする「釣り」は、彼女の制作態度を示すメタファーなのです。

KOTARO NUKAGA