2024年 9月 07日TRAVELING FOR ART
ERINA MATSUI
天王洲アイルにあるギャラリーANOMALYにて、松井えり菜の個展「アストラル・ドリーマー」が開催されました。
「変顔」の自画像で知られる松井えり菜は、2004年GEISAI #6で金賞を受賞しデビュー後、自画像やその絵画史、また自己の作品のルーツについて考察を続け、制作・発表してきました。
松井にとっての絵画制作とは、現実では叶わない理想郷を自由に構築できる場であり、スペクタクルな宇宙空間と日常の自分自身の対比など、スケールの大きな世界を描くことのできる手段でした。
漫画やアニメから大きな影響を受けてきた松井は、なかでも子供の頃に出会った「ベルサイユのばら」や「魔法使いサリー」など少女漫画に傾倒し、ブロンドの少女や西洋文化に強く惹かれてきたと言います。そのような憧れの対象に変身するような自画像も描いてきましたが、多くは「変顔」と呼ばれる滑稽な表情や極端にデフォルメされた顔でした。「変顔」は、自分の滑稽さを素材にして他者と笑いや感情を共有したいという若者たちから生まれた流行で、80年代生まれの松井はそのものをキャンバス上で体現しながら、絵画の世界にセンセーションを巻き起こしました。
近年、パリに赴き制作を進める中で、何を描いて/何を描かないかを改めて考察し、むしろ描かなかったことで広がる無限空間に着目するようになりました。
「変顔」を描く「上手さ」に通じるリアリズムから距離を置き、鏡を通して自分を見ている自分を天井の視点から描く入れ子状の視点から描いた自画像や、少女漫画のような素敵な自分ではなく、憧れのパリに居て朝起き抜けで髪がボサボサな自分自身のリアリティを描き、鳥瞰する視点が絵画に現れるようになりました。





