2024年 6月 04日TRAVELING FOR ART
KISHIO SUGA
六本木にある小山登美夫ギャラリーにて菅木志雄展「あるというものはなく、ないというものもない」が開催されています。
菅木志雄は小山登美夫ギャラリーにおいて2015年から毎年精力的に新作を発表しつづけており、今回が9回目の開催となります。
菅木志雄は、60年代末~70年代の芸術運動「もの派」の主要メンバーとして活動後、独自の世界への視点と鋭敏な感覚で50年以上にわたり作品制作を行い、同時代を生きる戦後日本美術を代表するアーティストとして新たな境地を切り開いてきました。
木、石、金属、ロープなどのありふれたものを時に融和、時に対峙させながら配置し作品として表します。それはものを単独で存在させるのではなく、「もの」と「場」、「もの」と「もの」が相互に依存し合う「連関性」 や「差異」、「複雑性」を 表わす事で、その「もの」ならではの存在性を最大限に引き出しており、見たことのない新しい景色、状況を鑑賞者に提示してきました。
「石を『これはもしかして石ではないのかもしれない』とまで考える」というように、ものの意味や既成概念を徹底的に問い直すことが制作の重要な過程となります。
作品の素材でしかなかった「もの」自体や、ものを知覚する「人間」、それらを取り囲む「自然」へ目を向け、あらゆるものは対等な関係であり、それが普遍的な世界のあり方だと菅木志雄は捉えているのです。
その先駆的な考えはすでに活動初期の20代の頃から確立されており、作庭家 重森三玲や、京都学派、インド哲学の中観論に共鳴しながらいまもなお独自の思考を深化し続けていることが、菅木志雄の作品世界に自由な現代性を生みだしていると言えるでしょう。





