NANAE MITOBE

虎ノ門にあるギャラリー、THE LOOP GALLERYにて水戸部七絵の個展「WHAT COLOR DO YOU SEE?」が開催されました。

水戸部七絵は、これまで「顔」というモチーフを描きながら、人種・セクシュアリティを始めとする社会問題や資本主義的な経済システムに光を当てた作品を制作してきました。

2022年、水戸部七絵はオーストリア・ウィーン美術アカデミーに留学しましたが、この留学で、画家としての根幹を探究するようになります。

そこで直面したのが「色認識」への疑問でしたが、この展覧会では、留学中に取り組んだ、ヨーロッパの人々に好きな色を問うインタビューを通して、自身と他者との間に存在する色彩認識の違いに注目した新作の絵画が発表されました。

世界には約4パーセントの確率*で、通常の感覚に加えて別の感覚が付随的に起こる現象を体験している人々がいると言います。

文字や数字に色が付いて見えたり、音を聞くと色が見えたりするこの現象は「共感覚: SYNESTHESIA」と呼ばれます。

幼少期からこの共感覚を備える水戸部七絵は、今回の展覧会で絵画作品のほかに初めて映像作品を発表しました。

ブラウン管にインタビューの中で収録された音声に合わせてモノクロの字幕が表示されるこの作品では、「音」と「色」 の共感覚を視覚化させることを試みています。

水戸部七絵による国を越えた色認識の探究は、日々多種多様な「色」に囲まれて生活をしている私たちの、他者が持つ感性への興味を掻き立て、新たな対話をもたらすことでしょう。

LOOP GALLERY