RISAKU SUZUKI

六本木にあるタカ・イシイギャラリー東京にて鈴木理策の個展「冬と春」が開催されました。

タカ・イシイギャラリーでは6年振りの個展となるこの展覧会では、作家が継続的に撮影してきた主題をあらたな構成のもとに展示しています。

鈴木理策は「見るという経験とは何か」を問う装置として写真をとらえ、写真の特性と視覚の問題に関心を向け続けてきました。

写真を撮る行為には撮影者の眼、存在する対象をありのままに映し出すカメラという光学機械、それらをつなぐ媒介としての光、撮影者の意識外にある外界の揺らぎがあります。

現像された写真のイメージ同士の繋がりやそれらが組み合わされて「見る」という持続的な経験が初めて写真において成立し得ると鈴木理策は考えています。

この展覧会では鈴木理策が継続的に撮影してきた桜、雪、水鏡という主題がそれぞれ断片でありながら、並列されることで生まれる時空間に視線が注がれます。

写真と写真の間に生じる時間や季節の移ろいにより、隣り合う写真は見る者を介しながら響きあい、それぞれの心の中で身体的な経験として動き始めます。

作家が知覚した光、空気、温度、その移ろいをカメラによって機械的に記録する行為は、目の前に広がる光を一粒ずつとらえ、永遠に変容し続ける光景として描き出そうとした画家たちの試みにも通ずるのかもしれません。

それは、持続する時間の中でその過程を追体験する鑑賞者にとっては、現実とは何か、物事を見ている自分とは何なのかを問う、根源的な行為となるでしょう。

TAKA ISHII GALLERY