SHIORI TONO

天王洲アイルにあるMAKI Galleryにて、大分を拠点に活動する塔尾栞莉による個展「なんでもない」が開催されています。

この展覧会では、塔尾栞莉が日常の中で出会った些細な風景や出来事を写真に収め、それをモチーフに制作した作品を展示いたします。

アルバイト先でおすそ分けしてもらったクリスマスケーキ、誰の気にも留められず、時間の経過とともに静かに佇む植木鉢、太陽の光に照らされて輝くユーカリの葉。

それらは決してドラマティックな題材ではないかもしれませんが、だからこそ宿るかけがえのない愛おしさがあります。

目の前の風景や出来事を一つひとつ丁寧に描きながら、過ぎ去る時間とともに変容していくイメージの積み重ねが、私たちが生きる「今」そのものを浮かび上がらせます。

この展覧会の作品は、そうしたなんでもない瞬間にそっと光を当て、忘却の彼方へ沈みかけた記憶をやさしくすくい上げます。

ふと立ち止まり、過ぎ去っていく日々のかけらに思いを馳せるような時間を会場にて体験できる展覧会です。

MAKI GALLERY