YUIHA YAMAGUCHI

初台にある東京オペラシティーギャラリーもproject Nにて山口由葉の展覧会が開催されました。

山口由葉にとって絵画表現において大切にしているのはプロセスであり一手入れるごとにそれに反応したもう一手、というように、ひたすら純粋にプロセスを重視し、絵にはそれ以外の情報はないと言いいます。
しかし、鑑賞する側にとって山口由葉の絵画は、町中や道路、水辺と思しき風景が見えるし、作品のタイトルも「高速道路」や「バスの中からの月」といったようにきわめて具体的です。

実際、山口由葉はバスの中などの移動中、窓の外に流れていく景色を常にスケッチしていて、一瞬で過ぎてしまう風景を見ては覚え、描く、を繰り返すのです。そして、それがキャンバスに向かったときのきっかけとなるのです。

山口由葉のキャンバスの上の一筆ごとのやりとりの結果は具象の要素を残していて、抽象画ではありません。

目にした風景、あるいはその印象自体を絵画化したいわけではないので、やりとりは「絵画空間のなかの出来事」として、「印象のフラッシュバック」あるいは「あのとき見た風景の記憶」はここには関与しないのです。

PROJECT N