2025年 11月 29日TRAVELING FOR ART
YUKA HAMAMOTO
都立大学にあるKATSUYA SUSUKI GALLERYにて、濱元祐佳による個展「内なる怪物」が開催されています。
濱元祐佳はぬいぐるみをモチーフに、過去のトラウマや捨てきれない愛着といった、心の奥に潜む感情をテーマに制作を続けてきました。
この展覧会では、濱元祐佳の内面を見つめながら心の中にある厄介な存在としての「内なる怪物」と題した新作が発表せれています。
濱元祐佳が度々幻覚で見ることがあるという蜘蛛は、ユング心理学では「嫉妬深く子を束縛する母親」の象徴とされる一方、芥川龍之介『蜘蛛の糸』のように救いのイメージも併せ持つ存在です。
母親とは他の家族とは違う、独特の関係性だったと語る濱元祐佳は、象徴としての蜘蛛の、その二面性に惹かれ、不気味でありながらも愛らしいぬいぐるみを制作する事から、このの展覧会に向けての制作をスタートしました。
そして「内なる怪物の誕生」から「怪物殺し」へと続く、一つの物語として構成された今回の展示は、母を愛しながらも複雑な感情を抱く娘の視点から、不完全な存在を赦し、受け入れることへと向かいます。
「生きたまま生まれ直したい」と語る濱元祐佳にとって、制作は自己を見つめ直す行為そのものです。
ぬいぐるみたちによって、恐れや痛みを抱えながらも優しさを失わない存在として、私たち自身の内側に潜む“怪物”を静かに映し出したような作品が発表された個展です。






