ABOUT ROY LICHTENSTEIN

20代の頃、戦闘機が空中で撃破される瞬間の一コマをコミックタッチで描いたロイ・リキテンシュタインによる絵のポスターを部屋に飾っていた。

今考えるとおかしいが、ポスターをわざわざ額に入れて飾っていたのだ。

でも、それを見るたびにポップアートな雰囲気に浸れるし、なんだか部屋全体が急にモダンでお洒落な感じになったような気がして凄く気に入っていた。

その後、ポスターは引っ越した時にでも処分してしまったのか残念ながらもう手元にないが、あの頃のウキウキした気分だけは今も心の片隅に残っている。

ポップアートの作家は数しれずいて、巨匠といわれる作家も多い。

ウォーホルを始め、ジャスパー・ジョーンズ、ラウシェンバーグ、ローゼンクエストなど、全ての作家が偉大な足跡を残してアメリカンポップアートの一時代を築いた。

そんな中でも僕はリキテンシュタインが大好きで彼の作品集を20代の頃に購入した記憶がある。

アメリカンコミックの一コマをキャンバスに描きつつ、コミックの持つ均一なドットの並びやシャープな線を独自の表現方法として取り入れ、それを貫き、唯一無二のアートの表現として昇華させていった偉大な作家だと思う。

アメリカンコミックから影響を受けた大胆でシャープな線やフラットな表現手法はリキテンシュタインのトレードマーク的な描き方となったが、彼はアメリカンコミック的な題材から他の様々な題材へと描く対象を変えては次々に彼独特の世界観で表現していった。

風景も描いたし抽象画や他の巨匠達の絵も彼のタッチで描き、新たな作品として作り上げた。

ドットはまるで印刷されたように正確に並び、線はあくまでシャープにはっきりと描かれ、点や線、または色が混ざり合ったりしているような曖昧な部分はないのだけれど画面はとても表情豊かで様々な工夫によって実に見応えある絵として成立している。

リキテンシュタインのスタジオはソーホーに近いノーホーのラファイエットストリートにあったのだが、ニューヨークに住んでいた頃、そのスタジオの1階入り口のアパートを鳴らすボタンが気になって仕方なかった。

そこにはタイプライターのような文字で小さくLICHTENSTEINという文字が貼ってあったのだった。

その前を通る度にちょっとドキドキしながら近寄ってみては「このビルの中であれらの絵は描かれているんだろうなあ」なんて思ったのを覚えている。

まるでストイックな職人のように忠実に真面目に自分の選んだ表現手法で様々なポップな絵を描いた偉大な作家はきっとそのロフトビルのスタジオでコツコツと日々偉大なアートを描いていたに違いない。

 ROY LICHTENSTEIN

ARTRANDOMで販売しているリキテンシュタインの作品集はタイムズスクエアのパブリックアートを製作したドキュメント本だ。

クールでシャープな線とドットの織りなす世界はリキテンシュタインの作り上げた彼独自の美意識の世界なのだろう。

ニューヨークの街に出現したリキテンシュタインのアートとそれを見上げる人たち。