ANDY WARHOL AMERICA

アンディー・ウォーホルによる写真と文章の本「AMERICA」を買ったのはまだNYに住んでいた頃だからもうだいぶ昔のことだ。ウォーホルといえば誰でも知っているほど有名なポップアートを代表するアーティストである。

以前に六本木の森美術館で展覧会も開催されていたので多くの若者も20年以上前に他界したこの類い希な才能を持ったアーティストの存在を改めて知ったのではないだろうか。

ウォーホルというアーティストはAMERICAが大好きだったのだと思う。UNITED STATES OF AMERICAというよりもAMERICAという漠然とした括りで捉えられるアメリカでありそこに暮らす人々や独自のカルチャーを愛していたのだ。ハリウッドセレブ、ロックミュージシャン、コカコーラ、キャンベルスープ、リッチもプアーも白人も有色人種も全てを含むAMERICAが大好きだったのだ。そして、それはそのまま彼の創作意欲に直結していて彼の崇拝するAMERICAを表現する作品を山のように作り上げた。

ウォーホルはシルクの作品に留まらず様々な手法のアートで表現を試みた。ムービーや写真なども彼の重要な表現手段だった。特に彼には収集癖的な気質もあり日々の生活で出会った人や行った場所を写真で記録することを怠らなかった。

六本木ヒルズで開催された展覧会でもこうした写真やタイムカプセルと称した彼の蒐集物の展示がありとても興味深かった。AMERICAに納められているのはそんなウォーホルが撮った写真の数々だが、毎日の生活を生涯写真で記録し続けた彼はこの本に収まり切らない数の写真を撮っていたに違いない。

このAMERICAでは特に彼がこだわったいくつかのテーマで写真を編集して掲載している。そして、写真のボリュームと同じかそれ以上なのが彼の手記でそれは読んでいてとても面白い。彼の独特な物事への考え方が非常によく分かるし、繊細で頭脳明晰なアーティストの一面が理解出来る。

ウォーホルはイラストレーター時代の作品を見れば明らかるように素晴らしい腕前のアーティストであったが、その後、彼のファインアーティストとしての活躍はこの独自の明晰な考え方によって成り立ったのだという事実をAMERICAの写真を見ながら手記を読むと分かってくるのだ。

また、AMERICAにはニューヨークにいた頃にクラブで見かけたダウンタウンのセレブリティーやその時代を代表するセレブ達が多数写真に収められていてそれらの人は見ていて懐かしい気持ちにさせてくれる。AMERICAを愛し、時代を愛したウォーホルは沢山の作品と記録された記憶を残した作家だった。

ANDY WORHOL

 

当時のニューヨークダウンタウンの面々の懐かしい写真だ。ブランコに乗って下を見ているのは友人でウォーホルのアシスタントをしていたベンジャミン・リウ。彼からウォーホルの話をよく聞かされた。初めてベンジャミンがウォーホルのアップタウンのタウンハウスに招かれた時に何か食べる?と言ってウォーホルが運んできたのはボウルに入った暖かいキャンベルスープだったそうだ。悪ふざけかと思ったらウォーホルはいたって真面目だったというから面白い。

セレブリティーの写真も多数あって社交会を出入りしていたウォーホルの日常が垣間見れる。ミーハーでセレブ好きだったに違いない。パロマ・ピカソにカルバン・クラインと当時最もホットだったセレブが素顔を見せている貴重なスナップである。

テニス選手のジョン・マッケンローは現代アートのコレクターとしても大変有名だ。ウォーホルはこのように見た瞬間にスナップを撮っていたのだろう。ベンジャミンのウォーホルのスタジオでのアシスタントとしての最初の仕事はウォーホルが毎日撮影する大量の写真のポジの整理だったそうだが写真を見るとウォーホルがどこに行って誰に会ったか、何をしたかが時間軸で手に取るようにわかって面白かったそうだ。