DO YOU KNOW ABOUT BOB ROSS?

BOB ROSSというアーティストを知っている人はいるだろうか?アフロヘアの白人のおじさんである。彼はアメリカで大衆向けに生産販売されていた安い油絵の絵画作品などでよく使われる典型的かつ、量産型的な油絵技法の伝道師だ。

80年代にアメリカに住んでいた頃に彼の絵画教室のテレビ番組をたまに見かけてはその独特な存在感とピースフルな絵の世界に不思議に魅了された。本人はヒッピーカルチャーの方なのか、いつもハッピーで優しくてゆったりとした語り口。絵を描き進めながら森の絵を描いている時には「小鳥のさえずりやリス達のじゃれる姿を想像してごらん」みたいなコメントを優しい声で差し挟む彼の絵の世界はハッピーな世界という一環した姿勢が感じられた。

彼が描く油彩は風景や海の絵などだが、パレットナイフを巧みに使って描く技法はある意味完成されていて迷いがない。アメリカのスーパーマーケットや安いモーテルで見かけるような誰が描いたか分からないような典型的な油絵を見事に描くのだ。

ご本人はお亡くなりになったと聞いたが、ある意味、独自の絵の境地を開拓した彼の功績を個人的に認める偉大なアーティストである。

そんな彼の絵の技法の解説本を見つけた時には真っ先に買い求めた。

その絵のスタイルは解説に従えば誰でも描けるはずなのにきっと彼にしか描けない世界のような気がする。

ラッセンを思い浮かべた方がいても不思議ではない。絵の描き方は基本的には同じ感じなのだろうと思う。しかし、ボブ・ロスの絵にはイルカは登場しない。あくまでも幻想的ですらある美しい夕日に輝く波なのである。

雪景色の森に夕日が沈む絵だと思うがゴツゴツとした木がちょっと怖い感じだ。まるでうっかり魔法の森に迷い込んでしまい遭遇したこれらの木が怪しく動き出しそうな異様な雰囲気だ。

ボブ・ロスの描くスタイルは下書きなど一切なくまず空など遠くからだんだん近くのものを描き足していきいくつものレイヤーを重ねるように完成させる。その時に「この辺りに大きな山を作ってみよう!」とか「手前に深い森があるといいね』などと言いながらそれらをいともたやすく描いていくのだ。それにしても森の中の開かれた穴から美しい雪山を眺めるというこの飛び抜けた発想と大胆な構図には浮世絵なんかに通じるダイナミックさがある。

南国のビーチには誰もいない。波が打ち寄せて波しぶきをあげ、ビーチではヤシの木が3本風に激しく揺れているだけだ。ひょっとするとどこかの無人島か?ボブ・ロスの想像の世界にだけ存在する風景なのである。

BOB ROSS