WONDER OF TIM ROLLINS + K.O.S.

1981年のことである、アートの教師だったティム・ロリンズはブロンクスにあるSCHOOL52というパブリックスクールのジョージ・ガレゴ校長に呼び出された。

学校に在籍する感情的に問題ありとされる生徒のためになんとアートを使って読み書きを教えるという斬新な試みの授業を任命された。

授業の初日、ティム・ロリンズは生徒たちに「今日から私たちは共にアートを作りますが新たな歴史も作るのです!」と声高々に言い放った。

そこにはブロンクスの貧しい地域にあるパブリックスクール、いわゆる公立学校の生徒たちにとって読み書きどころか生き残るのも精一杯な中で何かを成し遂げるには「歴史を作ってやる!」というほどの強い意志とサバイバル精神で物事に取り組んで欲しいというティム・ロリンズの願いがあったのだ。

それからというものティム・ロリンズと彼の生徒達、通称「K.O.S.ーKIDS OF SURVIVAL」は本のページを読みながら同時に他の生徒が文章から連想して思いついた絵を描くという独自の方法で読み書きをしながらアート制作を始めた。

キャンバス代わりに本のページを張りめぐらしてコラージュした画面に金色なども使ってシンボリックな様々なイメージを描きこみながら作品は作られた。

この授業はやがて加速して授業後に学校の近くに借りたスペースでのワークショップになりさらにはチェルシー地区にスタジを借りるまでになった。

ワークショップはさらに続き「アートで読み書きを学ぶ」というそのユニークな学習法は他の州にも知られることになり最終的にはフィラデルフィア、メンフィス、サンフランシスコにも「K.O.S.」のメンバーが広がっていった。

その後、TIM ROLLINS と「 K.O.S.」はギャラリーでの展覧会も開催、彼らが共同で制作したアートは高い評価を得ることになり全米を周りビエンナーレにも出展、遂には有名な美術館で展覧会も開くまでになった。

この感動的な話を聞く前に僕は彼らの作品をメアリー・ブーン・ギャラリーで見てとにかくその素晴らしさに度肝を抜かれたのを覚えている。

衝撃的にクリエーティブな作品に一体どんな作家ですか?とギャラリースタッフに聞くとこれは公立学校の生徒たちが読み書きの授業の一巻で描いた作品ですと説明されて信じられない驚きを感じた。

TIM ROLLINS と「 K.O.S.」は授業の初日にTIM ROLLINSが宣言した通りに新たな歴史を作り出し僕は幸運にもその作品をライブで見ることができたのだった。

本のページを切り取り並べて敷き詰めた上にシンボリックな絵が描かれる。

宗教のシンボルのような有機的な柄のような不思議なイメージに心を揺すぶられた。

これが子供達の共同作業から生まれたとは思えない素晴らしさだが子供達だからこそここまで自由に描けたのかもしれない。

仏教の曼荼羅の西洋版のようなイメージだがティムの指導も適切だったし子供達のサバイバルのための気持ちも絵に込められているに違いない。

 

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