FLY ME TO THE MOON

外苑前にあるギャラリー、EUKARYOTEにて楊博の個展「”Fly me to the moon”sequence1:Nightingale and Rose」が開催されています。

2020年コロナのパンデミック渦において「距離」というものは誰にとっても意識しなければならない身近なテーマとなりました。

アーティストの楊博はその「距離」を「遠さ」と言い換えこれまでの作品制作を踏襲しながらも今回新たな作品を制作したと言います。

ジャズのスタンダードナンバーである”Fly me to the moon”をタイトルに入れたのは恋を伝える前置きに「月まで連れていって!」と歌うこの曲の中に愛を伝えるために事前に必要だった照れ隠しの遠回りに見る「遠さ」の表現のような思いがあるのです。

芸術作品の創造の手前にある「受容」、また作品が連続して生み出される中での関係性の不条理などをまるで喜劇のような視点で表現した試みです。

巨大なキャンバスに描かれた文字、キャンバスはたるんだカーペットの上に直置きにされています。

丸い額縁の中にはピンクの色合いで描かれた庭の風景。額縁に刻まれたアルファベットがどこかシンボリックで不思議です。

ゆるく描かれた植物の絵と描きこまれた色の中に浮き上がる文字。対照的な展示を同じ壁面で関係させます。

薄塗りの木の葉のようなイメージの上に浮き上がる文字。象徴的なような予言的メッセージを感じる作品です。

この作品が展示してある部屋は壁面もこのような質感で変化させました。金網が破られ浮かび上がる文字、遠くの家と月のある空が物悲しい感じです。

EUKARYOTE