2023年 4月 05日TRAVELING FOR ART
GORO KAKEI
六本木にあるタカ・イシイギャラリーにて掛井五郎の個展が開催されました。
掛井五郎は1950年代から、立体作品を軸に、油彩、ドローイング、エッチングやリトグラフなどメディウムや技法に捉われない自由な制作を精力的に続けた日本の戦後の彫刻家として知られています。
タカ・イシイギャラリーでの初個展となるこの展覧会では、晩年まで制作を続けた掛井五郎の膨大な作品より、1970年代から2000年代にかけて制作された立体作品と油彩画が展示されました。
1949年、戦後の混乱期に静岡から上京した掛井五郎は、後に「人生が始まった」と振り返る木内克の彫刻作品に出会います。
掛井五郎はこの出会いをきっかけに彫刻家としての人生を歩み始めます。
翌年、東京藝術大学彫刻科へ入学後、本格的に彫刻制作と向き合い始めた掛井五郎は、アカデミックな技法には飽き足らず次第に石膏の直づけによって大胆なデフォルメを加えた独自の人体表現を追求するようになります。
1957年には「受胎告知」にて第21回新制作展の新作家賞を受賞し、その後も「処女マリア」(1958年)、「ヨブ」(1961年)、「使徒」(1962年)などキリスト教の信仰から生み出された作品を数多く発表します。
18歳で洗礼を受けた掛井五郎にとって、聖書に由来する作品を制作することは、聖書の解釈の手段であるとともに、人間という存在の本質を問う自身の思索を表現する行為でもありました。
また、掛井五郎は、素材の多様化や若い世代の作家による自由な表現が大頭した1960年代の現代美術の新動向に与することなく、自身の制作モチーフを極めて古典的な「人間」に拘り独自の具象表現を愚直に探求し続けました。