2020年 11月 27日TRAVELING FOR ART
ANOMALY
アートフェアやギャラリー巡りなどを紹介するTRAVELING FOR ART。
今回は天王洲アイルのテラダ・アート・コンプレックスにあるギャラリーANOMALYで開催されていた小西紀行さんの絵画展「内なる基準」を紹介します。
小西紀行さんは自分自身や家族、知人などのプライベートなスナップ写真を参照しながら独特な絵画作品を描きます。
荒々しく流れるようなブラシストロークや弾けるような色彩、被写体である人々は大胆に細部を削ぎ落とされ変形して描かれるのです。
小西紀行さんは心理学者だった祖父と対話を持つことで幼少期から人間の判断基準や行動につて考えをめぐらせていたと言います。
人間をどこか客観的に捉える視点を獲得して「描く」行為を通じて人間についての思考を深めてきたのだそうです。
筆はもちろんタオルや手指などを用いて描かれる人体は記号と化したようにさえ見えますが絵の具を擦り付け拭い取った痕跡やキャンバスを横断するようにうねる筆のブラシストロークによって空間や身体そのものも歪められて絡み合う様には入念に思考を繰り返しながら描き進んだ痕跡が見えてきます。
キャンバスを床に立てたり壁面にも不規則な位置に作品を展示するなど動きのある展示が広いギャラリー内に広がります。
色彩の炸裂やブラシストロークの勢いなど試行錯誤を繰り返しながら描かれたのが見て取れます。
描かれては拭き消されまた描かれるという繰り返しがあった痕跡を見ることができます。
青にグレー、そしてアクセントのように入る赤、色彩感覚もとても特徴的です。
描きこんでまた消してという中から独特の画面の緊張が生まれるような気がしますがこの肖像画は赤い色が鮮烈です。