VOL.3 TSUYOSHI NOGUCHI
過去にインタビューしたコレクターを再編集してお届けするCollector Vol.3で紹介するのは野口強さんです。
スタイリストのアシスタント時代から写真が好きで写真集を買い始めやがてプリントを買い始めた経緯やどんな作家のプリントをコレクションしているか、プリントにこだわる理由などお聞きします。
田辺:
お忙しい中どうも!
野口:
はい。
田辺:
まず、聞きたかったのは写真をコレクションし始めたキッカケ?
野口:
もともとは、写真集。。
田辺:
うんうん。
野口:
で、ほら、アシスタントの頃って写真集買うのも高いじゃない。
でもまあ、立ち読みとか、六本木遊びに行った帰りにブックセンター行ったりとか。
神保町行ったりとかコツコツ写真集は買っていた。
でも写真見てると、ちょっとプリント見たいなあってなるじゃない。
で、ギャラリー行ってみたりしたりして。
ちょっと余裕が出来てじゃあ本物って!
写真集が偽物って訳じゃないけど、プリントを買ってみたいなって思った。
田辺:
なるほどね。
写真集は、ファッション写真とか?
野口:
いや、もうばらばら。
田辺:
ばらばら、でも、写真が好き?
野口:
そうだね。
田辺:
写真集を買ってた頃に特に印象的なのは?
野口:
最初の頃は、やっぱりちょっとファッション系が多かったのかな、なんか。
アヴェドンとか、それこそブルース・ウェーバーとかペンとか、それ系が多かったかな。
田辺:
ブルース・ウェーバーのリオとか?
野口:
うん。
田辺:
あの頃のは凄いですよね。
野口:
そう。で、リオの中でも「あ~この写真欲しいな」って思ったらブルース・ウェーバーが撮ってなかったりするんだよね。
田辺:
え、本当に!
野口:
そう!ドーベルマンがジャンプしてる写真が欲しかったんだけどギャラリーの人に聞いたら、チコっていうブラジル人が撮ってた。
田辺:
マジに!
野口:
そう。
田辺:
え、あれ全部ブルース・ウェーバーじゃないんだ!
野口:
それが欲しいって言ったんだけど、どこにいるか分かんないって言われて。笑
田辺:
凄いね!
野口:
そう、ニューヨークのギャラリーでそう言われたの覚えてる。
田辺:
で、最初に余裕が出来て買った写真は何?覚えてます?
野口:
一番最初に買ったのはなんだっけな、ブルース・ウェーバーかな?
田辺:
ブルース・ウェーバー!
それはどこで?
野口:
ニューヨークで。
それは、リオの中の観客だけ撮ってるやつがあるの。
田辺:
へえ~
野口:
うわぁ~っていう群衆を。
田辺:
へえ~それを。
男と女のみたいなそういうのじゃなくて?
野口:
じゃなくて。
あと、サーフギャング。
田辺:
あ~サーフギャング。
野口:
そう、その2枚かな。
田辺:
それは当時でも結構高かったの?
野口:
いや、まあ、高いよ。
でもどうなんだろう?
やっぱりさ日本だと犬とか、あっち系の方が皆好きでしょ。
田辺:
あ~そうだよね、あの、ゴールデン・リトリーバー的な。
野口:
そうそう。
本当はねチェット・ベーカーでトランペット持って、寝てるやつで上に手書きで書いてるやつとか欲しかったんだよ。
田辺:
あ~いいっすね。
野口:
あれはもう、自分の分しかやってないって。
田辺:
やってないんだ。
結構ブルース・ウェーバーは手書きで写真に色々な文字とか書いた人ですよね。
あれもまたセンス良くって。
野口:
そうそう。
田辺:
ブルース・ウェーバーの後にアヴェドンとかペンとかっていう大御所的な人を?
野口:
そうだね。
もう、やっぱりそういうのにはもちろん惹かれるんだけど。
でもパリフォトとか行って、なんかドイツ人の無名な人の写真とかも買ったりするけど。
田辺:
なるほどね。じゃあ、もう有名無名関わらず?
野口:
ジャケ買いみたいなもんだね。
田辺:
ジャケ買いね。
野口:
そうそう。
田辺:
その、写真を買いたい時って「買いたい!」って何かがあるの?
こういうのにピンと来たら買うとか。
その、ジャケ買いっていうの?
野口:
う~ん、でもスティール・ライフが多いかな、あんまり人物ものは買わないかな。
田辺:
なるほど。
野口:
モデルとかでいわゆるファッションフォトみたいなのは買わないかな。
田辺:
へぇ~結構意外な感じ。
野口:
あとはウォーホールとかはありだけど。
田辺:
あれはでも存在自体が面白いからね。
今日のコレクションの逸品のラリー・クラークとかはいつ頃から知って?
野口:
えーっと、タルサとか見たの何年前だろう?
20年は経つよね。
田辺:
そうだよね。
やっぱりちょっと衝撃的な?
野口:
うん。で、まあそうやって見ててこういう人達と死ぬまでに一回仕事してみたいなとかって思う訳じゃない。
田辺:
うん、思いますよね。
野口:
まあ、願えば叶うみたいなもんで。。
田辺:
うん、叶うよね。
野口:
そうそうそう。
なんか、やっぱり写真家ってじゃあ今度はじゃあこの人と仕事してみたい!なるよね。
で、徐々にもっともっとってなるよね。
ペンが生きてたら物撮りとかやってもらいたかったな~みたいな!笑
田辺:
そうだね~それは贅沢!笑
野口:
そうそう!
で、写真買ったりするとギャラリーの人が紹介してくれて繋げてくれて撮影出来るようになったりとかっていうこともあるし。
田辺:
それがキッカケで広がったりするっていうことだね。
野口:
そう。
田辺:
じゃあ、仕事と関係性はあるって言ったらある。
ラリー・クラークさんはどうだったですか?
実際に仕事してみて?
野口:
いや~大変でしたよ。笑
田辺:
大変だった!?
野口:
大変ですよ!笑
先生ですから。
やっぱ、商業カメラマンじゃないしね。
田辺:
うんうん。
野口:
作家でしょ、ある意味。
やっぱ好きにさせなきゃいけないっていうか。。
田辺:
あんまりあーだこーだいうと。。
野口:
ただ、こういうこととこういうものは欲しいってもちろん言うけど。
それだけちゃんと伝えておけば、やってくれる、みたいな。
田辺:
なるほど!
野口:
まあ、日々勉強ですよ!笑
田辺:
でも、そういう人と仕事すると色々と感じる?
野口:
感じるでしょ、それぞれ皆違うしね。
田辺:
例えばテリー・リチャードソンはまた違う?
野口:
テリー・リチャードソンはまた違う。
田辺:
なるほどね。
野口:
そう。
田辺:
写真を実際に写真集じゃなくオリジナルを買ってみて結構白黒が多い?
カラーも買いますか?
野口:
カラーも買ったりはする。
買うけど、ペンの昔のやつとかニュートンの昔のとか。。
田辺:
何が魅力?
野口:
なんだろうな。
酒飲めるよね。
これだけで!
こう、眺めながら!笑
田辺:
なるほどね!笑
男の時間。
田辺:
でも、ペンなんか本当に凄い!
このなんていうかな、いろんな見え方が出来ちゃう。
深いですよね!
こんな写真撮れるんだっていう。
やっぱり眺めちゃうねこれだけで酒飲みながら。。
野口:
デジタルとはやっぱ違うからね。
田辺:
そうだね~。
やっぱりじゃあプリントにこだわる?
野口:
うん。
野口:
でもまあ、ファッションに関しては別にデジタルでも良いんじゃないかな。
田辺:
スティールライフとかはやっぱりプリントの方がきれいですよね。
風景とかは?
野口:
風景はね~
あ!あるよ道。
ハリー・キャラハン。
田辺:
はいはい、ハリー・キャラハン!
野口:
道だけ撮ってるんだけど。。
田辺:
いいですね。
野口:
デジタルとか値段高いのが分かんないんだよね、どうなの?って。
まあ、時代だからかな。
田辺:
でも、デジタルは試されてないから分かんないっちゃ分かんない、100年もつのかどうかとか?
野口:
このプリントなんて本当に超きれいだと思うよ!
田辺:
きれいだろうね、きっと。
まあ、写真集は印刷物なので本物の存在感っていうのは本物しか持ってないものなんですよね、きっと。。
野口:
そうだね~
田辺:
じゃあ、プリントっていうか、本物の写真の存在感みたいのが好きなのかもしれないね。
野口:
うん。まあ、やっぱ次はプリントってなんじゃない?
田辺:
プリントとかはどこで買うの?
野口:
ニューヨークか、パリか、ロンドン。
田辺:
それは仕事で行ったときとか?
野口:
そうそう。
で、行く頃になるとギャラリーから営業メールが来るから。。恐ろしいんだよ!
田辺:
分かる!でも、それ凄いですよね、ギャラリーの商売根性!
野口:
凄いのは、分割でも良いとかって言うからね。
おまえそんなに欲しいなら分割でも良いからどうだって!笑
田辺:
いや、でもそれが商売ですからね。
特に海外のギャラリーは凄いですよね、一回買ったらね。
野口:
だってさ、ものだけ先に送って来てさ、金は後からで良いからとか。
本当にいいの?
それで?
みたいな。笑
田辺:
写真と一口に言ってもいろいろあって面白いですね。
今日は貴重なお話をありがとうございました!
野口:
いえ、どうも!