VOL.7 YASUMASA YONEHARA
過去にインタビューしたコレクターを再編集してお届けするCOLLECTOR VOL.7で紹介するのは米原康正さんです。
サブカルチャーやその時々の若者の動きを追う編集者でありチェキなどを使って作品制作をするアーティストです。
田辺:
今日はよろしくお願いします!
米原:
よろしくお願いします!
田辺:
部屋いっぱいに色々あるけど、これはなに?
もう何十年にもわたるコレクション?
米原:
そう!というか、90年代からのもあれば高校生の時からのものもあるから。。。
田辺:
うんうん。
米原:
だから40年以上にわたるコレクション?
田辺:
40年以上にわたるコレクションかあ!
米原:
うん、本とかはほとんど初版じゃないかな。
でもまあ初版にこだわるのって俺たちみたいな世代だけなんだよね。笑
田辺:
うん、確かに!
米原:
もう今の子達に初版とか言っても「関係ねー」って話しだもんね。
田辺:
うんうん。ま、あとフィギアとかね。。
米原:
そうそう、だから「昭和の部屋」って呼ばれてんの。
田辺:
「昭和の部屋」?あ、なるほどね。
米原:
そう、今の子達って、物持たないじゃん。
田辺:
そうだよね~
米原:
みんなパソコンの中に入れちゃうから。。
田辺:
そうだよね、物欲がないよね。
米原:
ないない、だからこの部屋とかくると怖いとか言われるもの。
田辺:
あ~、でもちょっとした店よりも物があるんじゃないかぐらいあるものね。
凄いっすね、まあ、地震が来たらちょっと。。。
米原:
うんもうここに埋もれて死ぬっていうのが最終的にはね。
ドーンって落ちて来て最後は本に埋もれて死ぬっていうのが。。
田辺:
確かに!笑
でも、ここはじゃあ物を置く場所であったり、アイデアを考えたり?
米原:
そうそう、こういう資料って大切で、今はなんでもサンプリングでしかなかったりするじゃない。
そしたらその原型知ってる方が強いかなって思って。
田辺:
うんうん、なるほどね。
米原:
あ!あの時にこういうのあったなとか、調べようと思えば調べられるし。
田辺:
コレクションするのって場所も必要だし大変だけど本物に触れるって大事な事ですよね。
米原:
そうそう。
田辺:
確かヨネとはスペースフォースでエキシビションとかやってた頃からの付き合い。
でも、始めの頃からチェキとかポラとかで作品作るっていうスタンスはもう決めていた?
米原:
うん、決めてた決めてた!
田辺:
自分はアーティストとしての一面と、編集者っていう一面がある感じ?
米原:
うんそうだね、でも基本的にどっちもお客がいるってことは一緒だったりするんだけど。
編集者の場合は本当に客の立場に立ち、客をどう喜ばせるかみたいな部分で編集して。
アーティストの場合は自分の作る物をどう客に見せるかって。
田辺:
なるほどね、あと自分をどう喜ばせるかとか?
米原:
うんうん、そうだね。
自分も客になるみたいな。
あとなんていうかな俺、自分だけを喜ばせるっていう事にあんまり興味なくって。。
田辺:
あ~わりと考えてるんだ。
米原:
常に客がいるって状況を考えてるのよ。
田辺:
なるほどね。
米原:
だから、それがなんていうかな、「egg」とか作った時も当時の女子高生の客っていうか。
そういう子達が好きなものから何か作ればファインアートに近いだろうなって思ってやってたんだ。
だけど誰もそれを気付かず、認めてもらえず。。笑
田辺:
サービス精神が旺盛なのかもね?
米原:
うん、まあ、人を喜ばせたいっていうのが凄いあるからね。
田辺:
なんか、アーティストとして女性なんかいっぱい撮るじゃない?
そうすると、おだてて撮るとか、喜ばせるとか、良いもの引き出す為にノリを作って行くとか?
やっぱそういうのが根底にあるのかな?
米原:
そうだね、でもおだてるっていうか、基本的には根本にあるものが。
なんていうかな、分かるっていうか、俺、大体人が分かる。
人が分かるって言い方も変だけど、この子はなんでこうなのかとか大体分かるのよ。
その人が何を考えてるかみたいな事が。
田辺:
ふーん、なるほど。
米原:
分かり過ぎて俺、小さい頃からそれが嫌で、凄く。
だから、世界全体の流れとか、そういうの。
とんでも話しみたいになって来るけど、ちゃっちゃい頃から自民党は二つに分かれるってずっと俺思ってたし。
田辺:
へえ~
米原:
なんかこう、そういう流れを続けて行けばこうなるみたいな部分とか。
この人がこういう生き方してけばこうなって行くとか、大体分かるの。
だからほら俺凄いいつもさ売れてる人のそばにいるみたいにさ、言われたりするんだけど。
それって売れてるからいた訳じゃなくて、売れる前からいたりする訳だよ。
田辺:
そうだよね~早くから着目するよね~
米原:
それって、さっきも言ったけどこいつには客が絶対につくなとか。
今みんな知らないけど、この辺が良いんだよみたいなのが分かるから。
その辺をこう、詰めて行くと大体の世の中の流れみたいなのが分かったりして。
田辺:
なるほどね、じゃあピンと来るみたいな、そういうのがあるんだ。
米原:
うん、だから、それをあんまり考えて人と接してると、最初からこの人は無しとか。
基本的にはそうなっちゃうから、極力そういう考え方はもうしないようと思ってたりするんだけど。
男子にはそういう考え方使わないようにしてるのよ、かなり生活面に支障きたしたりするから。
で、女の子の場合とかはやっぱり、それを逆に仕事にして女子のなんていうかな。
可愛い子といつも一緒にいるって部分で使って行こうってなって、だから女子もまだ初めてって頃から関わってるみたいな。
田辺:
そうだよね。ヨネが取り上げた子が有名になっちゃうっていうのがよくあるじゃない?
そういうのはなんとなく見える?
まあ、見えるというかなんかこう感じるものでもあるんだろうね。
写真家にとっては大事な資質ですよね?
米原:
そうそう、アーティストってそういうの大切だと思うんだ。
例えばウォーホルだって新しいものが出たらその新しいものをどう使って行けば良いか分かってるというか。
あの人って一流のプロモーターだと思うのよ。
田辺:
確かに!そうだね。その辺の嗅覚は凄いよね。
米原:
常に新しい技術が出るとそれを作品として使って行こうっていう。
俺本当にそれ悔しくて、それで先を越されてるのが!
田辺:
わはは!
まあ、ウォーホルはね、20世紀の生んだ、メディアの時代の生んだ最高のアーティストですよ。
米原:
個人広告代理店としては凄い人だと思うんだよね。
田辺:
確かにね!
ところで、このブログは「アートを少しでも身近に」って思いでやってるんですけど。
アートってあまり売れないじゃないですかその作品自体は。
でも、日本も何かっていうとアートアートっていうけど、実際問題ファインアートでいったらマーケットがないとか。
色んな事情があると思うんですけど、どうですか日本のアートの現状なんていうのは?
米原:
う~ん、僕自体がまず日本の権威みたいなものが好きじゃないっていうのが最初にあって。
権威っていっても、海外の権威と日本の権威ってなんか違う感じがしてて。
だから日本のなんかその、そこがないと始まらないとか。
勉強もしてないくせに威張ったりしてるって状況だったりするっていうのが嫌で。
田辺:
そうだね、なんか封建的な。。
米原:
そうそうそう!
田辺:
村社会っていうかさ。
米原:
そこを凄く感じてて。
だからそこん中で認められてもしょうがないかなみたいな。
凄く前からここに関わってもあんまり世界と縁がないのかなっていうのがあり。
田辺:
そうだよね、そういうのから常にフリーで、で、ヨネは中国なんかでは凄く受けてる訳じゃない?
だからやっぱり、関係ない!って感じですよね。
米原:
だからまだ俺がこういう事やろうって思ってた30代40代の頃って海外に対してどうやってやろうっていうのが凄い大変だったから。
だからなんて言うかどうしてそんなに簡単にパクれる?みたいな。
海外からもう勘弁してくれよってくらいにパクられたし。
今だったら違って来るけど、1990年代から2000年なんてポケベルだから。
今だったら考えたのをすぐにメディアに出せるっていうのがあるから。
田辺:
今は個人がメディアとして発信出来る、そしてそれが拡散するっていう時代じゃないですか。
その中にどっぷり浸かってるっていう、でも世代的にはポケベルっていう。。
米原:
そうなのよ、だから俺あと20年遅く生まれてたら違ってただろうな~みたいな。笑
田辺:
まあ、でも逆にこの部屋じゃないけど、今の若者世代?さっき言ったみたいに物に執着しないとか。
僕らの頃って物の憧れとか海外の憧れみたいのが凄くあったけど。
今は皆海外に行った事もないのに知ってる気になってるとか。
パソコンに取り込んだらそれで所有した気になってるとか。
リアルとバーチャルがごっちゃになってるというか、それって不思議な感覚ですよね?
米原:
だからパソコンを使い出して思ったのが、物を集めてるとこんな凄く乱暴に積まれてるように思うけど。
どこに何を入れてるみたいのは実は俺はちゃんと把握してて、日本の写真集はこことか、あるんだけど。
パソコンだとフォルダ作ってぽこっと入れてて、「あれ?あれどこ行ったんだっけ?」みたいな事とかある。
田辺:
逆にね!
米原:
なんか、久々に開けて見ると、「あ!ここにこんなのあった!」みたいな。。
パソコンの責任になっちゃってなんにも後作業が出来てないみたいのが多かったりするから。
だから、こういう風に現物で持つことが大切なのかなって思った。
田辺:
なるほどね、だから使い方ですよね、パソコンだけになっちゃうとね。。
米原:
だからそれを考えると、アートとか美術品とかって物としてあるものが本当に大切になってくるんじゃないかって気がする。
田辺:
うん、なんか日本ってアートを見るけど。
じゃあ10万円のバッグは買うけど、10万円のアートは買うかっていうとまったく買わないじゃないですか。
それって日常生活に海外なんかはアート飾ってるじゃないですか。
そういうのあんまり習慣がないっていうか。
なくなっちゃった?元々はあったんだろうけど。
そういうのってなんか理由があるんですかね?日本の場合は。。。
米原:
うーん、だからなんていうのかな。
俺よく言うんだけど日本ってその、自分たちに対しての現実感みたいなものが凄く薄かったと思うのよ、ずっと。
それは何かっていうと、やっぱ恰好いいって物が海外のものだったりっていう。
要はそのあくまでイメージとしての格好よさみたいなのを追っかけて来ていて。
じゃあ、アートみたいなものもこれが恰好いいみたいな、自分の意見じゃなくイメージとしての格好よさみたいなものを。
でさ、「あ、これ恰好いいですね!」みたいな話しで。
でも、自分の中での格好よさじゃなくて、イメージの中での格好よさって時間が変わったり時代が変わったりすると忘れちゃったりするじゃない。
田辺:
イメージは変わりますよね、時代とともに。
米原:
ゴッホのヒマワリがいいって50何億使ったりとかさ。
それって自分達が良いって思ったんじゃなくてヒマワリがいいってまわりが思ってる部分に払うみたいなことが昔バブルの頃にあった。
日本のお洒落系の雑誌とかがお洒落って枠でしかアートを語れなくなってるとか。
それと一緒だと俺は思うんだ。
お洒落じゃなくても良いじゃないアートは。
でも、今や日本ではお洒落でしかアートは語られない。
洋服以外のメディアでアートが出てくるとかもないし。
それはイメージにおいてお洒落ってことでしかアートを語れない。
田辺:
なるほどね。
田辺:
日本ではアートがファッションになっちゃったのかな。
米原:
ファッションになってるの。
だからそこの部分が日常から離れて行くってとこだったりして。
俺からすると別にアートってなくてもいいもんだと思うんだけど。
「あればなんか良いじゃん!」って物だと思うんだよ。
もしくはそれがあった瞬間に「俺ってすげーな」っていう、意味もなく感動するとか意味もなく怖いとかっていう。
そういう意味のないって部分の人の気持ちに伝えるものっていうのがアートだと思ったりするんだけど。
田辺:
なるほど。
米原:
それがやっぱり日本だとお洒落っていう枠だったりさっきも言った通りイメージ?
あ、こういうのがお洒落かも!こういうのが高いからお金持ってるように見えるかもとか。
なんか、その純粋な感動っていうのではない、なんだかの部分でしかアートをずっと語ってこなかった。
田辺:
確かに!そう思う。
なんか、海外って、もちろん人に自慢するっていうのもあるかも知れないけど、自分自分の為に買う。
アートが必要な自分がいて、例えば自分が見て癒されるとか、誰が良いって言ったとかではなくてっていうのがあるじゃないですか。
だから好きなポストカードなんかを机にばーっと貼ってる人もいれば、お金貯めて自分の好きな絵を買う人もいる。
流行とかファッションじゃなくて、根本的な動機みたいのがちょっと違う。
米原:
そうなのよ、だから「これ良いでしょ?」って言った時に俺はこのアートを良いと思ってるんだけど。
普通の人は「いいでしょ?」って言った時に「お洒落でしょ?」とか、「お金持ってるっぽく見えるでしょ?」とか、違う意味があるような気がしてて。
だから他の人の部屋とか行くとさ、なんでこのアートとこのアートを一緒に買ってんですか?みたいな。
アートの横の繋がりみたいのがないとかさ。
なんでこの本とこの本が一緒なんだろうとかさ。
俺はもうここにある本とか説明しろっていえば言えるのよ。
田辺:
繋がりがね。
米原:
繋がりが。
でも、日本って結構ばらばらの部屋だったりとか統一性がないのよ。
田辺:
人の意見に惑わされている?
米原:
自分の意志で物を集めてないっていう、アートだけじゃなくて。
じゃあソファ選ぶとか冷蔵庫選ぶってところから全部なんか入ってるような気がして。
田辺:
個性を尊重するっていう欧米の文化、その最たるものがアートであるみたいな。
でも日本ってどっちかっていうと個性を出すといけないんじゃないかみたいな。
だから多くの人が良いというものを良しとしようみたいな。
根底に違うものが流れているというか。
米原:
流れてる流れてる。
田辺:
ねえ、そんな気がしますよね。
ところで、ヨネのコレクションはフューチュラ?
米原:
フューチュラです。
田辺:
もうフューチュラといえばね、グラフィティーアート界のカリスマですよね。
米原:
カリスマですね。
田辺:
で、親交があって、日本に来た時にこれをもらったの?
米原:
そう、97年にフューチュラが来日した時にアテンドっていうか、遊び連れてってよみたいになって。
ちょうど俺が「egg」作ってたから新宿のコギャルばっかしのクラブに連れてったのよ。
田辺:
コギャルクラブ?
米原:
コギャルクラブ!笑 そしたらもう「イェーイ!」みたいなのりになって。
こりゃあスゲーみたいな話しになった。
ちょうどその頃に俺が持って来るエロい物を仲間と皆で見るっていうのやってて。
で、こういうの盗んで来たりとか、こういうプラモデルいっぱい買ったりとかしてたのよ。
で、その話しをフューチュラにしたところ突然これに描き出して、なにやってんだろうなって思ったら。
すんげえ一生懸命やってて、で、これヨネの為だって言って。
どうしたの?って言ったらこのディックが付いてる宇宙人はこれしかないって。
田辺:
あー凄いね!
じゃあこれはもうプライスレスですね。
米原:
ははは!プライスレス!
田辺:
なるほどなるほど
米原:
というね、97年に描いてもらったやつだね。
田辺:
まあ、このイメージは鮮烈だったよね。
分かりました、実にヨネらしいコレクションだと思います。
田辺:
というわけで、そろそろこの辺で。
今日は長々とありがとうございました!
米原:
はい、ありがとうございましたー