ATSUSHI YAMAMOTO

六本木にあるギャラリー、シュウゴアーツにて、初となる山本篤の個展が開催されました。

2003年、多摩美術⼤学絵画学科を卒業した山本篤は、ベルリンに渡りアーティストとしての道を模索していた最中に、ブルース・ナウマンの展示に出会い、アートを完成されたモノとしてではなく、現在進行形の行為としてアプローチするナウマンの手法に衝撃を受けたといいます。

以降、山本篤は「作品がどう見えるかではなく、何がなされているか。HOWよりWHAT。

クオリティよりアティチュード」という考えのもと、絵画から映像の世界へ転向し、「自分が本当に見てみたい」という「欲望」を燃料に身の回りのあらゆる材料を用いて手を動かし続けたのです。

その結果として15年間で200本を超える映像作品を残すまでに至りました。

2018年から一年間、山本篤は安定した日常サイクルからの逸脱を求め、家族を連れてベトナム・フエに滞在しました。

経済的にも世代的にも変革を迎え、伝統的なコミュニティや戦争の傷痕が消えつつある彼の地において、山本篤は制作に向けられた自分自身の欲望は主体的なものではなく、環境によって様々に引き起こされる「反応」であると気づきます。

そして帰国後にコロナ禍に突入し、世界的に日常が日常でなくなり、他者との繋がりが大きく変化する中、在宅という閉ざされた状況の中で発生する自身の反応をつぶさに見つめることとなりました。

そうして山本篤は「家」というキーワードを物質的な側面に限定せず、個と個、個と国家、個と地球など、複数の概念の境界線として捉え、様々な関係性のリフレームを試みます。

この展覧会では帰る場所としての家、ドリームハウス、人間以外の存在にとっての家など、ベトナムとコロナ禍の日本で制作された映像作品を発表しました。

SHUGO ARTS