HUGE WORKS OF ART

海外のギャラリーや芸術祭などを訪ねて巨大なアート作品に遭遇するたびにどうやってこのような規模の作品を展示したのかに驚かされることがある。

ビエンナーレのような芸術祭ならまだしも普通のギャラリーで巨大なアート作品を見ると海外のアートマーケットの規模の違いを見せつけられているようで感無量だ。

しかし、巨大なアート作品を展示できるギャラリーはニューヨークでも数少なく、それらのギャラリーはもはや普通のギャラリーではなくちょっとしたミュージアムなどを凌駕するほどのメガギャラリーなのだと思う。

昨今はガゴジアンギャラリーを筆頭にして、ペース、ハウザー&ワース、ディヴィッド・ツヴィルナーなど限られたメガギャラリーがますます巨大化してマーケットを牛耳りリードしているように思う。

コロナ禍で多くの中堅ギャラリーがダメージを受ける中、こうしたメガギャラリーは逆に繁栄しているようにさえ感じられる。

例えば去年、ニューヨークのMETRO PICTURESという中堅ギャラリーがコロナの影響でギャラリーを閉めた。

METRO PICTURESといえばチェルシー地区にギャラリー街が移動した初期からギャラリーを構えていた老舗ギャラリーの一つでロバート・ロンゴやシンディー・シャーマンなどの人気作家を抱えていた。

しかし、ギャラリーが閉まったあとはそういった人気作家がハウザー&ワースに移籍したと聞くともう大きくて強いメガギャラリーの独断場のように思える。

こういったメガギャラリーは優れた作家を争奪し合いながら世界中の富裕層コレクターと繋がり更に大規模になって行くのだろう。

それにしても海外の作家が恵まれていると思うのはメガギャラリーがあってこそ展示できる規格外に巨大なアート作品を制作できる事実である。

おそらく作品は制作される前に買い手は決まっていてギャラリーに展示するのはちょっとした最後のお披露目という感覚なんだと思う。

そして、そんな規格外の巨大アート作品を制作する作家の筆頭はなんといってもガゴジアンギャラリーに所属する彫刻家のリチャード・セラだと思う。

リチャード・セラの作る鉄の彫刻は信じ難い大きさで、まず一体どうやってここまで大きな鉄の塊の作品を作ろうと思うのか、そして作れるのか想像を絶する。

そして、この大きさの鉄の彫刻をギャラリーに運び入れて展示するガゴジアンギャラリーの資金力と労力と技術力の凄さにはただ驚くばかりだ。

リチャード・セラの作品はDIA FOUNDATIONなどのアートの財団のギャラリーやLA郡美術館、ビルバオグッゲンハイムなど、世界中の美術館施設に展示されているがそれらはほぼ永久展示なのに対してガゴジアンギャラリーの展示はせいぜい2ヶ月ほどでその後はおそらく作品を買った人に納品するのだ。

その2ヶ月ほど展示のためにギャラリーにぎりぎり収まる限界の信じ難い大きさの鉄の彫刻を展示するとは単純にギャラリーでの作品展示とう次元ではない。

作品の規模ということで言えば2017年のベネチアビエンナーレの時期にヴェニスで同時開催されたダミアン・ハーストの巨大な作品群にも度肝を抜かれた。

ルイヴィトン・グループのピノー・コレクションと企画したこの個展は「信じられないほどの残骸からの宝物」と題されグラッシ館とプンタ・デラ・ドガーナの2箇所で同時開催されたのだが古代ギリシャの沈没船から回収されたという設定のお宝の数とその規模は想像を遥かに超えていた。

こんなプロジェクトができるのも欧米の現代アートが凄まじい資金力のマーケットによって成立しているからだろう。

海外に行ってこういった巨大な現代アート作品を見るたびにもう驚嘆する以外はなく、「これはわざわざ海外に来てでも見る価値がある」としみじみ感じるのである。

いったいどうやってギャラリーに運び込んだのか?と思わせるリチャード・セラの鉄の彫刻。

作品の表面に縄の跡みたいな痕跡もなくフックのような設置のための器具なども見当たらない。どうやってガゴジアンギャラリーへ運んできたのだろうか。

こちらの作品はまあ頑張れば運べそう?ではあるがそれにしても凄い大きさと数だ。

一体どのくらいの重さがあるのだろうか、シンプルで凄まじい存在感である。

DIA FOUDATIONの展示施設DIA BEACON内のリチャード・セラの展示。

「信じられないほどの残骸からの宝物」と題されダミアン・ハーストの作品。

古代ギリシャの沈没船から回収されたというお宝のサイズは人と比べると分かりやすいが巨大だ。

「信じられないほどの残骸からの宝物」からもう一つの展示は巨大な銅像。

この巨人を制作するにあたってダミアン・ハーストはこの造形に耐えうる素材を特別に開発したそうである。