2023年 8月 01日TRAVELING FOR ART
KOHEI YAMADA
六本木にあるタカ・イシイギャラリーにて山田康平の個展「Strikethrough」が開催されました。
タカ・イシイギャラリーでの初個展となるこの展覧会では、大小様々なキャンバスに描いた油彩画とアルシュ紙を用いた小作品が発表されました。
山田康平が描く絵には、筆や刷毛がキャンバスの上を心地よい疾走感と共に勢い良く駆け抜ける様子が見えます。
繰り返される大きく素早いストロークにより、キャンバスの表面は丹念に色で覆われ、整った美しい筆跡と共に隣り合う色が重なり見事なグラデーションが生まれます。
展覧会のタイトル「Strikethrough」には、取り消し線と印刷用語で紙の裏までインクの油分がにじみ出る現象を指す二つの意味が存在し、画面が色で覆われ、重ねた色が混ざり合っている状態や、キャンバスに染み込んだオイルの様子を表していると言えます。
山田康平は、作品とその制作過程、自身が発する言葉や記す文字に幾重にも意味を持たせ、同時にその中に外からは見えずに隠れている何かが存在している事も意識しています。
色と面を用いて描かれる、奥行のある抽象的な空間は、山田康平が目にした記憶の奥底にある風景や、この世界で起こる事象が基になっています。
筆を進めることで形や記号として表出するそれらは色面へと変化し、表面しか見えていなかった物の内側に光があたります。
描かれた奥行のある空間の中には、山田康平が見つけ出した物事の意味や本質が存在しているのです。