MIYUKI INAGAKI

六本木にるCLEAR GALLERY TOKYOにて、稲垣美侑の個展「渦としかく」が開催されました。
2年ぶりの個展となるこの展覧会では、稲垣美侑が2018年から継続的に訪れている三重県鳥羽市の離島で出会った情景から制作された新作の油彩画、陶器などの立体作品が展示されました。

稲垣美侑は、自分の置かれている状況や他者の理解など様々な環境を含めて、自身のごく素朴な関心として「目の前に広がっている世界がどんな姿だったのか」ということを考えたり想像することが、作品をつくる動機付けのひとつになっていると言います。

そして身辺にある環境を観察し、日常の積み重ねから生まれる景色やその場所に宿る記憶や感触、その場所に触れることで得たイメージの断片を確かめながら再構築しています。
また稲垣美侑は、制作においての重要な取り組みとして、何度も繰り返し取材地を訪れることを続けています。

それは稲垣美侑にとって何か大きな実践というよりも、日常の延長線上の中で眺められる景色への探求心であり、行ったり来たりを繰り返し、その往復運動で打ち返される感覚や、生き物や他者からの目線、その地に残された言い伝えなど周囲や環境とのやり取りから、何か現実だけではない人間由来の想像力や遊戯的な行為によって紡がれる物語の切れ端のようなものを、絵や展示空間のなかで描き起こそうとしているのです。

稲垣美侑が提示する、違うものが存在しながらもそれぞれが響き合うことで生まれる新しい景色は、ギャラリー空間の中で互いに影響しあって存在しているようです。

CLEAR GALLERY