YORIKO TAKABATAKE

アートフェアやギャラリー巡りなどを紹介するTRAVELING FOR ART。今回は2020年の東京から。

六本木にあるShugoArtsギャラリーにてアーティスト高畠依子の作品展「MARS」が開催されています。誰でも子供の頃に磁石で遊んだという記憶はあると思いますが磁石を砂の中に入れると鉄分を含んだ砂鉄が磁石に吸い付きまるで鍾乳洞のつららのようになる現象に驚きながら遊んだものでした。

思えば人間を含むこの世に存在する全ては引力で地表に留められているわけですが普段は意識などしないこうした目に見えぬ力によって毎日を過ごしているのです。引力のように実態のない想像という力を表現するアートはそれを作品という形にした瞬間から物理的に存在するものになります。

物理的なものの存在と目に見えない作品表現への意志が同時に進行して制作される、そんな驚きを与えてくれるのが高畠依子さんの作品です。

物理的に科学的な試行錯誤を繰り返して目に見えぬ表現という意思を具現化しアート作品として表すというその制作手法は実に興味深いと言えます。

今までも水や火といった物理的な要因を表現手段として様々な作品を制作してきましたが今回は磁石を使って細い線状の絵の具を操り美しい線の重なりのパターンを作り上げています。

その結果、絵の具がまるであの磁石に吸い付いた砂鉄で見たような小さなつららのような盛り上がりや美しい線のパターン模様を作り出すのです。こうして絵の具という物質の物理的な作用を磁石を用いた美的な表現の作用で見事に出逢わさせて見たこともないような独特の絵画作品を生み出したのです。

油絵の具に含まれる鉄分が磁石に反応して浮かび上がる見事な曲線の美しさです。

絵の具はマルスブラックといい酸化鉄からなる黒色顔料で鉄分の含有量が多いので磁石の磁力に敏感に反応しするのです。

初めて見たときに一体どうやってこのようなパターンの線を描いたのかと見た人が思うような不思議な絵です。

近くに近づいて絵の表面を見ると絵の具が浮き上がって砂鉄の時にできたつららのようになっているのがわかります。離れて見ても近づいても見ても驚きの絵です。

SHUGOARTS