ANONYM
アートフェアやギャラリー巡りなどを紹介するTRAVELING FOR ART、今回は外苑前にあるギャラリーEUKARYOTEにて開催中の菅原玄奨による立体作品の個展「anonym」を紹介します。
「anonym」とは特定不明な古代の作家や匿名性を表す言葉ですが菅原玄奨による立体作品は対象を具体的に特定できない作品と言ってもいいのかもしれません。
粘土で造形してから型をとって樹脂で本体を作り表面をなめらかにして着色するという複雑な工程を経て完成する立体作品は全て同じグレーの色をしています。
女性の像、男性の像など様々な立体作品はそれが何であるか特定できる形をしてはいますが目や口のディテールとった表現は省略されて微かなヒントのように溝が入れてあったりするに止まります。
ビデオゲームやインターネットに幼少時代から親しんできた世代の作家が表現するのは特有性よりも匿名性、崇高性より偏在性なのかもしれません。
立体作品に限らず対象を抽象化するのではなく匿名化するというのは新しい表現の領域だと思われますがそれはデジタル社会の現代に出現した新しい感受性なのかもしれません。
スェットの上下を着た女性はつま先で宙に浮くようにふわりと立っています。細かなディテールは刻まれてなくグレーの均一な質感だけが存在するのです。
積み上げられた貨物パレットの上に女性と男性、サボテンやペットボトル、ガチャのカプセルにルービックキューブなどが置かれていますが全て具体的には特定できない匿名性の中に存在しているようです。
女性の首から上の像ですが目などは省略されて不特定な立体として存在します。
3階あるギャラリーの展示スペースの最上階には打って変わって粘土の造形の形をそのままにした荒々しい立体作品が展示されていました。
無機質だったグレーのスムーズな表面ではなくシルバーがキラキラと入った粘土そのものの陶芸作品のような感じですがやはり不特定な何かになっています。