DRAWING NOW

今から約20年以上も前、村上隆や奈良美智などの日本人アーティストが欧米のアート界に出現して少し経ったころにMOMAのキュレーションで出版されたdrawing nowというこの本では、当時注目されていたアーティスト達の作品をoneからeightまでのプロポジションと呼ばれるチャプターで紹介している。

ドローイングやペインティングなどの作品群をその作品の背景に感じられる特性で分類して紹介するという編集の視点が実に興味深いので購入した。

チャプターは科学、装飾、建築、幸福、知能、文化、サブカルチャー、ファッションの8項目。

それらのチャプターではそれぞれ3人の作家の作品を紹介している。

たとえば装飾ではローラオウエンス、サブカルチャーではバリーマッギーに奈良美智、村上隆、そしてファッションではエリザベスペイトン、ジョンカーリンなどが紹介されている。

80年代のNYを中心に起こったペインティングブームの後、次のアート界の流れを受け継ぐ新進気鋭のアーティスト達の作品はどれも個性的であり今見てもどこか時代が後押ししているような勢いに満ちている。

その後、現在に至るまでにこれらの作家は更に活躍して今もその多くがアート界をリードするような存在でいるのだが、今見るとこの本に納められている作品には既にほのかに懐かしささえ感じる。

アート界の新陳代謝は激しく、10年前などあっという間に昔のことのようになってしまう。

しかし、2030年前までを振り返った時、そのアーティストがアートの年表にきっちりと載るような本物の作家だったのか、あるいは時代が作り上げた幻だったのかが分かる、そんな気がするのだ。

流行だっただけなのか、確固としたアートの文脈で語られるような存在なのか、その歴史的な判断はその時代ではなく後世になってはっきりとするものなのだろう。